工作 at random −1

工作室各コーナーで、スペースの関係などで説明できなかったこと、瑣末なことでも何かのヒントになるだろうこと、などをランダムに記録するページです。

■二式大艇(アリイ 1/144)
かつて「ロールアウト準備中」として予告したものの、塗装すれば完成という状態からなかなか前進できずにいたもので、理由はやたらに多い窓と、か弱いプロペラにとまどっていたことでした。その解決策を参考までに……。【展示館:二式大艇】

●窓のほうは、正攻法でマスキングするのははなはだ根気が必要で、また自分の腕ではろくな仕上がりにならないことは火を見るより明らかです。さいわい?胴体側面に点在する窓が塗装での表現となり、キャノピーなど透明部品との整合性がとれないため、逆転の発想で(というか横着して、先人のキャノピーの透明化への努力を想い、慙愧を感じつつ……)透明部品のほうも思い切って塗りつぶし、塗装で窓を描くようにしました。作業は、全体に所定の塗装をして、窓枠やその周囲をマスキングし(写真上:収拾がつかなくなったマスキング−−襤褸をまとうが如し)、白色の下塗りの後クリアーブルーで少しでも窓の雰囲気を、というものです。【やってみた結果は、「……なんとも云えん……」というところでした。


●本機のプロペラはとても華奢で、スピナーにモーターの軸をさしこむ穴をあける作業で、もうプロペラブレードがもげそうになってしまいました。このまま、だまして完成させてもすぐ壊れるだろうしと……と悩んだすえ金属で鋳造してもらうことにしました。キットのプロペラはロストワックスの原型に用いるというわけです。プロペラの取り付けは、スペースの関係でジョイントを使用せず、プロペラ取り付け穴をエポキシパテでセンター合わせの処理をした後、少量のゴム系接着剤でモーター軸にダイレクトに取り付けています。(こころよく鋳造を引き受けて下さった吉田時彦氏に感謝致します。)

モーター軸を挿入する穴の工作は、従来のプロペラ軸の取り付けと全く同じで、ふたまわりほど大きくあけた軸穴にエポキシパテを詰めてセンターを出しています。モーター軸径と同じ0.8ミリΦの黄銅線を治具として使用し、パテがある程度硬化した後で外しました。なお鋳造の金属材料は「金・パラジウム合金」(歯科用の材料で、極めて強靱で正確に鋳造できる。地金だけでこのキットが4・5コは買えるほど高価)を使ってくれたそうで、重さは、1個約0.7グラムでした。塗装は、脱脂してMrメタルプライマーを塗布後行っています。


■ランナーの利用
ランナーの直線部分を、ローソク等の炎にかざし、回転させたり左右に動かしたりして軟化させ、そろそろと引っ張ると、その速度や柔らかくした部分の長さに応じて、太い線から細い線まで、また、平らな板などで挟むようにつぶすと平たいものを、自由に作ることができます。

そうひんぱんに使うものではありませんが、プラ・モデラーには基本的なテクニックですね。むかし雑誌の記事で知って、すっと伸びるところが面白く、必要もないのにけっこう使っていました。熱源は、ライターを使ってもできますが、ローソクが扱いやすいようです。2cmぐらいの太めのローソクを5cmぐらいに切って使います。短いので、そのままでも自立して倒れにくく、両手での作業が可能となります。一本買ってきて、余った分は、お仏壇でご先祖の供養に使うもよし、身体に「ろう」をたらして遊ぶもよし……


●デカールを作る●

■インクジェットでデカールを作る
キット付属のデカールが劣化していて、水に漬けたらバラバラになってしまったので自作することにしました。
胴体後部の「ROYAL NAVY/WG655」と垂直尾翼の「GN」はもう現物がないので、取説の図面をコピーで原寸大に拡大し、その部分をスキャナーで取り込み、「ROYAL〜」部分は大きさの見当として、文字を近い書体で直接入力、「GN」は画像を修正して使うことにしました。胴体側面と主翼下面の機体番号も同じ黒色なので、ついでに実験を兼ねて一緒に作ってみました。こちらはデカールの現物をそのままをスキャンです。【製作記事「ボーファイター」】

取込みは600dpi(2値)です。1回限りの使用なので、ベクトル化はせずビットマップデータのままで、フォトショップ(アドビ)でおおよその修正をし、OASYS-300DPでドット単位の修正をしました。

ベースのデカールはカルトグラフの「カラーデカール(クリア)」、プリンタはリコーの水性インクジェットプリンタ「PM-900C」、表面のコーティングは「LAST STEP-DECAL COATING」(MICRO FORMAT,Inc./発売:インターアライド)を使いました。
プリントは、用紙モードを変えて試してみましたが、「専用光沢フィルム」モードで、デカールの表面に(濡らして固くしぼったタオルなどで)少し湿りを与えてからプリントするとインクの乗りが比較的良いようでした。ただインクが用紙に含浸しないため、目視でも盛り上がっているのがわかるぐらいで、印刷位置によっては、プリンタの用紙送りガイドに触れてスジが入ってしまいます。使用したプリンタでは上写真の印刷位置がOKで、左側ではだめでした。結果として、水性インクジェットプリンタも、黒か濃紺などの濃い色系で、文字や簡単なマークにならそこそこに使えそうです。現在多く出回っている顔料系インクを使用したプリンタなら、もうすこし良さそうな気がします


■「プリントゴッコ」でデカールを作る
「L-19」の製作で白色文字のデカールを作る必要が生じましたが、手持ちのインクジェットプリンタでは白文字は作れず、熱転写プリンタは高価で手が出ません。他の方法ということで、シルクスクリーンが頭に浮かび、写真製版(ジアゾ式)できるキットを購入しました(銀座伊東屋)。しかし、やはり露光や現像方法などが面倒そうで取りかかれずにいたところ、ふと「プリントゴッコ」(理想科学)もシルクだと気づきました。こちらの製版の簡単さは周知のとおりです。
【製作記事「セスナ L-19」】
ベースのデカールは上記同様にカルトグラフのものです。「プリントゴッコ」のハイメッシュマスターとハイメッシュマスター用インクを使いました。
キットの取説の側面図をモデルと同じ縮尺にしてイラストレーター(アドビ)に取り込み、文字(ベクトル文字)を側面図に合わせて調節しました(そのまま縮小して、1/72へも利用可能)。最初、インクジェットプリンタで出力したもので製版したのですが全然駄目で(メーカーによれば、同じ黒でもカーボンが入っていないインクでは製版できないということ)、レーザープリンタで出力しなおして再挑戦しました。結果は、細かい文字もしっかり抜けていて良い版が出来ていました。
印刷は、年賀状のときと同じようにそのままのプレスしても、ほとんどインクが乗らなかったため、厚手のボール紙をスキージがわりに、版(マスター)の透明ビニールの上から押しつけるようにこすってみたところ、そこそこインクが乗りました。これ以上は面倒なのでそこで妥協しましたが、通常のシルクスクリーン用の比較的流動性の高いインクで、スキージを使い印刷するほうが良い結果が得られそうです。〈プリントゴッコのインクは、(印刷の仕方から)粘度が高くなっているので、ベタや小さい文字をきれいに出すことは難しい。